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【報告レポート】第10回:人を支えるテクノロジーの未来共創プログラムの"高齢者の見守 遠隔コミュニケーション&徘徊の現状と未来"

2017年9月 4日|新着情報

8月2日に株式会社エス・エム・エス様との共催にて「第10回人を支えるテクノロジーの未来共創プログラム"高齢者の見守 遠隔コミュニケーション&徘徊の現状と未来"」セミナーを開催しました。お陰様で、多方面から多くの方々が集まり大盛況にて無事終了しました。ありがとうございました!

後半のダイアログにおいては、参加者の皆さまと有意義な情報交流が行われ、様々な現状の課題や未来について意見交換が.活発に行われました。当日の内容についてご報告します。

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【講演1】
地方自治体との実証実験から見えてきた、見守りIoTサービスの可能性と課題

澤和寛昌(たくわ ひろまさ)氏
株式会社LiveRidge 代表取締役社長

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高齢者人口は2025年までは増え続けますが、それ以降は高止まりになります。したがって、介護業界も2025年以降は業界再編が始まるかもしれません。既存のやり方では事業の継続が難しくなり、新しいモデルが必要とされるようになるでしょう。そこで厚労省が提案しているのが、地域包括ケアという概念です。自治体は地域や住民で支えていく見守りの仕組みを作ろうとしており、介護事業者はこのなかでいかに介護保険以外のビジネスを拡大していくかといった経営課題に向き合っています。

私は介護業界に関わった後、IT関連の会社に転職しました。その経験をこれからの介護事業に役立てられないかという思いから起業しました。これまでのような介護業務記録や請求といったITの活用だけでなく、ITを使って情報収集を行い、介護者の状態を把握することで生産性を向上させたり収益を改善させることを目指します。

弊社が提供する見守りデバイスは、GPSを利用してデバイスを持っている人の位置を確認します。特徴はLPWA(Low Power Wide Area)という通信規格を採用していることです。これまでの近距離無線や携帯通信を使ったサービスと比べて、通信距離が長くて低コストでの通信が可能です。

認知症を患っている高齢者にこの見守りデバイスを持ってもらい、クラウドで情報を集めます。通常は家族がその情報を確認するのですが、行方不明になった場合などには支援者に通知を送って捜索を支援してもらいます。デバイスの製造やLPWAインフラの構築に関してはパートナー企業が行い、弊社はアプリのサービスだけを提供しています。

すでに自治体と一緒に実証実験を始めています。例えば、現在人口15,000人の鹿児島県肝付町の人口ピラミッドは、2060年における日本の人口ピラミッドと似ていると言われています。肝付町は広い範囲で超高齢化の地域が存在しており、地域を見守る目と手が足りません。そこで、この町では日本の将来像を先取りして見守りの課題解決に取り組みたいと考えました。実験としては、実際に住民の方に見守りデバイスを持って町を歩いてもらい、捜索チームが15分後に出発して対象者を探しに行くという検証を行いました。結果として、1時間以内にすべての対象者を見つけることができました。警察や介護事業者、住民、自治会などさまざまな人が参加し、住民同士が見守っていくということの関心の高さを感じました。

自治体では見守りの仕組みを導入したくてもそれだけでは予算化が難しく、いかに他のサービスと紐づけしていくかが課題です。そこで、見守りだけでなく、介護予防などヘルスケアにも活用できるような仕組みを提供すればいいと思います。一方、見守りのためのデバイスは、普段からみんなが持っていないと意味がありません。そのため、たとえば病院の診察券と一体となっていて、デバイスを持っていないと診察が受けられないなど、忘れて出かけると損をすると思わせるような仕組みも必要でしょう。

【講演2】
個人情報を守りながら街ぐるみで支えあう「みまもりあいプロジェクト」

高原達也(たかはら たつや)氏
社団法人セーフティネットリンケージ 代表理事

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日本人にはもともと、他人を思いやる気持ちや互助の精神があります。例えば、全国の交番に届けられる落し物の総額は、毎年164億円にも上ります。こういったことを知った時、私はこれが一つのインフラになると感じました。そこで、この互助というインフラを利用して、どれだけ安価な見守りサービスが構築できるかに注目しました。認知症を患っている高齢者だけでなく子供たちも含めて、緊急事態に地域が主体となって見守りあえる仕組みを作っていこうと思いました。

私たちが提供しているのは、互助のインフラにICTを組み合わせた見守りの仕組みです。人は家族の行方が分からなくなった、事故にあった、大切なものを落としてしまったなどの緊急時には自治体や警察に支援を求めます。でも、見ず知らずの他人に助けを求めることはありません。なぜかという理由の一つが、個人情報を他人に知られたくないからです。とはいえ、認知症の家族が行方不明になったといって自治体に相談に行っても、24時間365日対応してもらえるわけではありません。本人が隣の自治体に行ってしまうと、さらに捜索が難しくなります。そこで、個人情報を保護した状態で他人と直接連絡が取りあえる仕組みを作りました。昭和の頃の近所付き合いのイメージです。

この見守りの仕組みは、固有のID番号が付けられたステッカーと専用のアプリで実現します。例えば、このステッカーが服に縫い込まれた行方不明の高齢者を発見した協力者が、決められたフリーダイヤルの番号に電話をします。すると、自動的に事前に登録されている家族のスマホに電話が転送されるという仕組みです。電話を掛けた人にも掛かってきた人にも、個人情報が開示されることはありません。無事家族が迎えに行って解決した場合も、解決したことを伝えるボタンを押すだけで通知者にお礼の通知が届き、交信の記録などは削除されます。ある商店街で試してもらった時の感想ですが、「普段は仕事があるので人探しに協力することは難しいが、この仕組みなら対象者を見かけたらすぐに電話するだけなので協力しやすい」ということでした。

通常、電話をかけた相手が話し中だったり携帯電話の電波が届かない場所にいる場合は、いったん電話を切ってかけなおさないといけません。しかし、この仕組みではそういった場合でも電話を切ることなく、家族につながるまで複数の登録された別の電話番号に転送を続けます。この技術では、特許を取得しています。

こういった事業は、広告モデルでやると日本では難しいと思っています。したがって、将来的には公益社団法人になって、無料で全国の自治体にこの仕組みを提供したいと思っています。有料にすると、自治体によって導入できるところとできないところという差が生じます。この仕組みは全都道府県で均一に導入されることに意味があります。また、企業にはCSVとしての支援を募集しています。すでに、このコンセプトに賛同いただいたさまざまな企業や大学から協力をいただいています。


【対談】
ロボットや電話を使った高齢者と家族を繋ぐ遠隔での見守り

 (神山晃男氏/株式会社こころみ)×(青木俊介/株式会社ユカイ工学)
司会:馬塲寿実/NPO法人ハーモニー・アイ

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馬塲:まずは簡単にお二人が行っている事業を紹介してください。

青木:ユカイ工学はBOCCOというコミュニケーションロボットを作っています。あとからセンサーを追加すれば、家の鍵の開け閉めなどが感知できます。最近はBOCCOと連動できる温湿度センサーも発売し、子供や高齢者の熱中症などもスマホで見守ることができます。

神山:こころみでは、高齢者を相手に電話で会話をするというサービスを提供しています。身内には言えないことでも、第三者には言えるといったこともあり、会話の内容をその都度レポートにして離れて暮らす家族に送ります。

馬場:今AIがはやっている中、なぜ人と人とのアナログのコミュニケーションに力を入れているのですか?

青木:今のAIの技術では、ロボットを使って会話を楽しむのは難しいと思っています。最初からAIを使うと、かえってがっかり感を与えてしまい、コミュニケーションとしては逆効果になります。

神山:団地で高齢者の方にお話を伺った際に、高齢者は人と話をしたがっていることに気が付きました。ただ、そこをAIやロボットで補うのは難しいと感じました。

馬場:ユカイ工学さんのBOCCOは発売から2年経ちましたが、当初考えていたのと違った発見はありましたか?

青木:発売当初にはなかった機能として、ロボット側から話してくれることができるようになったのですが、それが結構好評です。これは開発時には想定していませんでした。今では、天気予報やカレンダーなどを聞くことを目的に買ってくれる人もいるようです。

馬場:こころみさんはサービス開始から4年経ちましたが、なにか変化はありましたか?

神山:サービスには満足していただけているのですが、想像していたよりも見守りという言葉に対して拒否反応を示す高齢者が結構多いです。自分はまだ必要がないと言われることが多いのですが、実際に使うと喜んでもらえ、サービスの継続率は高いです。

馬場:将来AIの技術がもっと進めば、それぞれの製品やサービスは変わってくと思いますか?

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青木:すでにいろいろな実験をやっています。たとえば、高齢者にマイクを付けて笑い声の回数をカウントするなどです。このように、センサーを使って楽しく元気に生活できているかを計測できないかと考えています。笑い声だけでなく、他にも会話以外のものをセンサーで検知することを考えています。それによって相手の気分を察し、BOCCOの発言内容が変わるような機能が追加できればと思っています。

神山:会話の音声データやテキストデータが溜まってきたので、大学の研究室や企業などと共同で分析を進めています。たとえば発言内容と、健康状態や認知症の傾向との相関などを調べたりしています。また、語彙の数が減っていると元気がないのではないかという研究や、声のトーンの変化がどういった健康状態を表しているのかといった研究も集めています。

青木:会話に出てくるボキャブラリの数が、認知症の兆候に関連があるかかもしれないという研究をしている先生がいて、僕たちも共同研究を行なっています。その研究では言葉の数をカウントする「万語計」を使っていますが、言葉の数は減らなくても、ボキャブラリが減って簡単な言葉しか言わなくなることは、認知症の進行にも関係がありそうです。

会場からの質問:それそれの製品やサービスをカメラと連動させることは考えていますでしょうか?

青木:カメラの利用も考えているのですが、カメラは利用者から敬遠されないかと思っています。

神山:女性は化粧をしないといけないので、カメラを避ける傾向があります。

会場からの質問:遠隔操作型ロボットによる効果は考えられませんか?

青木:操作する人が必要なので、コストの問題が解決できません。また、まだ人間の生活にはロボットは馴染んでいないので、もう少し時間がかかるでしょう。

神山:機械が返答できる所は機械に返答させ、応えられないところは人間が返答することも可能性としてはあるのですが、会話の話題が広がるとほとんどが人間が相手をするようになってしまいます。

【ダイアログ】


グループ1:東日本大震災の後に組織された部署で被災者の支援を行っていますが、見守りをどうビジネスに結び付けるのかが難しいと感じています。当人からお金をとるのも難しいし、なにか付加価値をつけるなどが必要になってくると思います。

グループ2:特養の関係者ですが、介護事業者はこれからどんどん減ってくるので、ロボットがいいのではなくロボットを使わざるを得ない状態です。そうじゃないと、高齢者がどんどん放置されていくといった危機感があります。また、ゆとり世代は認知症の患者に対応できず、すぐにやめてしまうといった話題も出ました。

グループ3:同じように介護職員不足の話題になりました。見守りサービスが事業者目線になっているのがおかしくないだろうかとか、自動応答によるやり方もあるでしょうが、施設内や建物内でもやりようがあるのではないかという話になりました。

グループ4:普段はロボットを作っている学生なので、見守りという話題が新鮮でした。確かに見守りは社会の中で必要ですが、一から新しいインフラを作っていくのは難しいと思います。ならば、既存のインフラの中から使える部分を付け足していく形がいいのではないかという結論になりました。

グループ5:AIが流行っている中、今日は人間が行うサービスの話が聞けて良かったと思いました。やはり、人間同士の触れ合いがよいと思います。一方で、企業のビジネスとして参入できないかと考えています。このグループには無線技術者や医療関係などいろいろな専門家がいました。いろいろとITに関わっていると、インフラの構築などまだまだ課題があります。見守りの仕組みはあれば便利ですが、そこに行きつくまでにまだまだ課題があって、そこは技術者が頑張らないといけないと感じました。


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