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【報告レポート】人を支えるテクノロジーの未来共創プログラムの"医療・介護におけるコミュニケーションロボットの現状と未来"

2017年7月29日|新着情報

6月27日都内にて開催した「第9回人を支えるテクノロジーの未来共創プログラム」のセミナー「医療・介護におけるコミュニケーションロボットの現状と未来」は、お陰様で多方面からの参加者様が集まり大盛況で無事終了しました。
講演者の獨協医科大学 情報教育部門教授 情報基盤センター長の坂田信裕氏と、社会福祉法人 東京聖新会 理事の尾林和子氏、お2人によるコミュニケーションロボットに関しての貴重な講演をいただきました。また、後半のダイアログにおいては、参加者の皆さまと有意義な情報交流が行われました。当日の内容についてご報告します。

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■講演1 医療教育者から見た、医療・介護におけるコミュニケーションロボットの活用との未来


坂田信裕(さかた のぶひろ)氏
獨協医科大学 情報教育部門教授 情報基盤センター長

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ロボット活用の話をする前に、それに至るICT活用検討の中で、経験した事例を少しお話ししたいと思います。以前いた信州大学医学部附属病院では、電子カルテなどの先進医療や遠隔医療など、ICTを活用した教育に関わり、小児病棟における遠隔交流システム「e-MADO」という仕組みを作りました。当時はインターネットが普及していない頃で、無菌病室に入院された患者さんのご家族からのご寄付を元に、子供たちの入院生活を支援する新しい仕組みづくりを行いました。e-MADOは、ウェブ会議システムを応用し、子供たちでも操作できるようにし、無菌病室と院内学級や自宅としました。初めての運用の際に、カメラを通して見えた父親の顔に向かって、無菌病室にいるお子さんが「パパだ」と大きな声をだし、その瞬間に父親の顔が明るくなったのを見て、心と心が通じたと感じました。また、自宅のカメラの前を誰かが通るだけで、お子さんから家で家族と一緒にいるような感覚になると言われました。こういった取り組みを通じて、ICTは無機質だけれど、人と人の心を結ぶことができると思うようになりました。

その後、今の獨協医科大学に移り、ICT活用教育や、医療等での応用について研究を進めている中、3年ほど前からコミュニケーションロボットに接することになりました。今では、Pepperをはじめ、10数台のロボットがいますが、プラスチックでできた変化しない無機質な顔なのに、向きによっては表情があるように見えるのが面白いと感じています。現在、学生の指導をしながら、ロボット活用教育や遠隔医療、介護の問題に関わっています。

日本の人口はどんどん減少しています。2015年からの10年間で約600万人も人口が減ると予測されている一方で、高齢者は260万人増えると見られています。高齢者が総人口に占める割合も2025年には3割を越えてしまいます。そこで学生達には、10年後自分たちが活躍する時に日本がどういう社会になっているのかをよく考えて、今、学ぶべきことに取り組んでみてくださいと言っています。
今ロボットに注目が集まっている理由は、人口減少、高齢化に伴う医療・介護人材不足の補充に期待するところが大きいと思われます。10年後には看護職員が40万人、介護職員が70万人くらいさらに必要になると言われていますが、実際には難しいことも分かっています。それを補うために、ロボットなどのテクノロジーの活用を考える必要があります。そこで、Pepperを使って、約2年半前には、認知症の患者と家族を明るくするアプリ「ニンニンPepper」を作りました。ニンニンPepperは、「Pepper App Challenge 2015」で最優秀賞とベストソーシャルイノベーション賞を受賞しました。

先日、私が不在のまま、教室でPepperに授業を進行してもらうという授業をやってみました。実際には、隣の部屋から様子を見ながらでしたが、学生はPepperの呼びかけに手を挙げるなど、素直に反応していました。また、学生たちにテクノロジーの現状や今後を考える機会として、介護ロボットやAIについて調べてプレゼンテーションするといったことも指導しています。今年の2月には、他の大学の学生さんにも、ロボットを使った取り組みの指導を行いましたが、興味深かったのは、「自分の思いをロボット経由で伝える」をテーマにしたら、「自分が傷つくことなく、好きな人への思いをロボットに告白させる」「母親にロボット経由でありがとうと言ってもらう」といったアイデアが出たことです。
このように、医学生や看護学生などにどんどん最新のテクノロジーに触れてもらい、自分たちが医療現場や社会に出た時に積極的にテクノロジーが使える人材になってほしいと考えています。

今、コミュニケーションロボットが徐々に生活の中に入ろうとしていると感じる人もいるでしょう。小型で持ち運びできるロボット、RoBoHoNにはユーザー会があり、好きな人は、RoBoHoNに洋服を着せたり、帽子を被せたりなどしています。まるで自分の家族やペットのような感覚、あるいは感情移入しているような場合もあるのではと感じています。最近では、自動車メーカーのトヨタも、KIROBO miniという小さなロボットの販売を開始しました。これらのロボットには実は性格の違いなどもあり、とても面白い部分だと思います。

ところで、海外のコミュニケーションロボットの展開は、日本とは少し事情が違うようです。イギリスのロンドンに行った時にサイエンスミュージアムでロボット展を見学した時のことです。たとえば、赤ちゃんのロボットが壁に展示されていたり、他のロボットもほとんどが停止したままブースに入れられていました。恐らく以前は、日本でもそのような状況にあったのかもしれませんが、今の日本の場合、こういったイベントではロボットと触れ合いができるように展示が工夫され始めていますので、ロボットに対する関わり方が変わってきていると感じました。

ロンドンのサイエンスミュージアムで、ロボット展に来ていた親子に聞いてみたら、Pepperなどのロボットにとても興味があると答えていたので、コミュニケーションロボットを受け入れる余地はあるが、まだ、日本とは異なる段階だと思いました。

ところで、デンマークのコペンハーゲンでは、ケアウェア2017という福祉機器展を見学する機会がありました。そこでは、介護支援機器として、折りたためる車いすや立ち上がることができる車いす、服薬管理システム、さらには、食べ物を口まで持ってきてくれるロボットやリハビリ練習用ロボット、病院の中を走り回るロボットもありました。印象的だったのは、トイレで用を足すためにズボンや下着を下ろしてくれるロボットです。ロボットに人間の手助けをしてもらうことがまずは優先されており、とまだコミュニケーションロボットの展開には至っていませんでした。今後、デンマークでも、コミュニケーションロボットが展開するのかにも興味を持っています。



■講演2 ICFの観点からみた介護コミュニケーションロボット導入の効果


尾林和子(おばやし かずこ)氏
社会福祉法人 東京聖新会 理事、特別養護老人ホームフローラ田無 施設長
老人保健施設「ハートフル田無」副施設長、一般社団法人ユニバーサルアクセシビリティ評価機構 代表理事

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平成28年度に介護コミュニケーションロボットを今後どのように展開させていくのか、その指標や要素を明らかにすることを目的とした、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(A-MED)の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」の採択を受けました。日本中で1000台のロボットを様々な施設で導入し実際に高齢者に対する介護などに効果があるのかを調査するプロジェクトです。

当施設では、既に2年前よりに、NTTデータとともにコミュニケーションロボットを活用した高齢者支援サービスの実証実験ロボット1台を対象者2名として導入し、データ採取していました。その結果、介護に関わるスタッフの業務実態の見える化が進み、過労度をデータ化することでを作成することができました。実際には、15時間という夜勤の時間帯の中で、疲労度や心理的負担に関しては仮眠前に最大となることが分かりました。そして、一番疲れている仮眠の前後3時間の業務実態では、介護者の健康状態を記録する作業に費やされていたことがわかりました。そういったタスクを一部ロボットに行わせることで、職員たちの介護負担を減らすことができないかということについても調べました。

その上で、A-MEDのプロジェクトに臨みました。ロボットを使って職員の介護負担を減らすにも、しっかりとしたエビデンスが必要です。このプロジェクトによって、実際のロボットの導入効果を明確にし、それらを反映させたガイドラインを考えようと思いました。

一方で、ロボットを介護業務に導入することでが、利用者自身の生活にどのような影響を及ぼすのかについては、あまり考えられていないという現実があります。そこで、介護する側の立場ではなく、介護される側の立場でロボットの有用性を知ることが重要であるとのことからICF(国際生活機能分類)による「活動「と「参加」の評価を個別の介護プログラムに沿って決められた一定の期間を評価しました。
ICFの評価シートは、「この人にこんなサービスを提供すると、こういったことができるようになるかも知れない」という、ポジティブな考えで作られています。「障害があるからできない」ではなく、「よくなる」可能性を主体に置いた考え方です。介護プログラムは「できる能力があるのに実際はしていない」という視点から評価しました。「本当はできるのなら、できるように生活を変えればいい」わけなので、そこにロボットを導入し「活動」と「参加」を高めよくすることを指標としました。すなわち、もともと持っている力を、ロボットを使って発揮できるようにするのです。

プロジェクトは、A-MEDが各ロボットメーカーにカスタマイズを依頼し、ロボットメーカーは介護施設にロボットを提供して、介護施設はAMEDの予算でロボットを買います。その後、介護施設が集めたデータをもとにA-MEDにフィードバックされるという流れでした。そこに、4つの社会福祉法人と5つの施設(特養:4施設、老健:1施設)が協力し、ロボットで介護する施設入所者として65名(平均年齢:86.6歳、女性:55名、男性:10名、介護度:3.4)を、比較のためにロボットで介護しない施設入所者(コントロール群)として15名(平均年齢:85.8歳、介護度:3.5)を選んでいます。実験に使用したロボットは3種(インテリボス:「エーアイセンス」、エヌ・ティデータ:「Sota」、富士ソフト:「PALRO」)で、計110台(社会福祉法人東京聖新会:52台、社会福祉法人真光会:28台、社会福祉法人西和会:12台、社会福祉法人大谷:18台)を導入し、4つの施設でクロスオーバー試験を行っています。ロボット導入内容の例としては、利用者が立ち上がった時にロボットがアラートとして声をかけ、同時に職員のタブレットに通報される等のシステムとなっています。

今回の実験を行った結論として、
  • コミュニケーションロボットは、機能障害健康に関わる国際分類(ICF)を用いた高齢者の「活動と参加」評価シートレベルにおいて、高齢者の"performance"を改善させた
  • 主要な改善は、コミュニケーション(会話)、セルフケア(身体の手入れ等)、社会生活(レクリェーション)分類領域で認められた
  • コミュニケーションロボット+見守りステムでは、夜間勤務介護労働者の自覚的疲度を軽減させた
  • コミュニケーションロボットの介護領域への導入は、高齢者介護を受ける側・提供する側双方にとって大きな利益がある
ということが分かりました。


■会場からの質問



Q:コミュニケーションロボットという呼び方は正しいのですか? 本来はコミュニケートロボットではないのでしょうか?

坂田:その点については、日本では使い方があいまいになっています。

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Q:高齢者を介護に出している家族の反応はどうでしたか?

尾林:家族が見学に来ると、「こんなロボットがいるの? これなら安心して利用できる。試しに利用してみよう」という声が聞かれました。

ダイアログ

・実験に関しては、治験者からの意見とかをもっと聞き出すことができれば、さらに深いことがわかるのではなかいという話が出ました。

・今回の実験結果について、事前に資料を見ていたのですが、尾林さんの発表を聞いてよく理解できました。

・ロボットはコミュニケーションとレクレーションの部分では即戦力になると感じました。見守りやセンサーについては、有効だと思える側面もありますが、監視されていると感じる高齢者がいることについては今後の課題だと思います。

・日本人はロボットに対して鉄腕アトムやドラえもんという土台があり、親近感を持っています。そこは海外との違いと感じました。日本で生まれたそのような意識を、海外でも生かせないでしょうか。

・人間とロボットの長期的な関係をどう築いていくかが課題だと思います。そこは、視覚障がい者と盲導犬の関係にも似たものがある気がします。一般的に盲導犬は人間と寄り添うイメージがあるのですが、実際にはそうでもない部分もあるそうです。人間と人間以外のものとの長期的な関係性については、哲学的な視点からも、もっと丁寧な考察が必要でしょう。

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