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【報告レポート】第8回:人を支えるテクノロジーの未来共創プログラム "障がい者スポーツや暮らしを皆で楽しくするテクノロジーの現状と未来(視覚障害者偏)"

2017年6月 9日|新着情報

5月24日に、パナソニック汐留ビルディングセミナールームにて開催した、「障がい者スポーツや暮らしを皆で楽しくするテクノロジーの現状と未来(視覚障害者偏)」は、お陰様で多方面からの参加者様が集まり大盛況で無事終了しました。講演者のパナソニック、ベンチャー企業のQDレーザから、最先端の技術が紹介され、後半のワークショップにおいては、視覚障害者を囲みながら、未来の楽しい暮らしについてワークショップをしました。とても有意義な情報交流が出来ました。当日の内容についてご報告します。

 
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■講演1 パナソニックの障がい者スポーツ観戦の取組み事例と展望


1.障がい者スポーツ盛上

黒川崇裕(くろかわ たかひろ)氏
パナソニック株式会社 東京オリンピック・パラリンピック推進本部
パラリンピック総括部アクセシビリティ担当 主幹

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パナソニックには、1988年から四半世紀にわたるオリンピックでのスポンサーシップの歴史があります。2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおいても、パナソニックの技術で支援し、スポーツを通じたよりよい社会の形成に貢献してくことを目指しています。

オリンピックでは33の競技が、パラリンピックでは22の競技が実施されます。その中で、本日ご紹介する視覚障がい者向けサッカーには、見え方に応じて「ブラインドサッカー」と「ロービジョンフットサル」という2つのカテゴリーがあります。以下では、主にブラインドサッカーについて触れます。

ブラインドサッカーは「カシャカシャ」という音が鳴るボールを使用し、その音を頼りに視覚障がい者がプレイをするフットサルです。サイドライン上に壁があるので、ボールがコートの外に出ていかないようになっています。フィールドプレイヤーは4人で、視力上の公正を図るために全員がアイマスクを着用します。ゴールキーパーや、相手ゴールの後でシュートの指示を出すガイド(コーラー)、およびフィールドの外からプレイヤーに指示を出す監督は晴眼者が行います。想像以上に激しいスポーツで、選手同士が頭をぶつけて失神することもあります。そういった危険を防止するため、ボールに向かっていく時には「ポイ」という掛け声をかけなければファールとなります。

ブラインドサッカーは2004年のアテネ大会からパラリンピックの正式種目になりましたが、以下に挙げるような観戦上の課題があります。
 ・声を出して応援できないので、フラストレーションが溜まる
 ・もっとも激しくておもしろい、壁際のシーンが見えない
 ・ひな壇スタンドが少なく、後からだと見えにくい
 ・視覚障がい者スポーツでありながら、視覚障がい者自身が楽しめない

そこで、パナソニックでは今年度からフランスのVOGO社と提携し、ICTデバイスやスマホ、タブレットなどのモバイルデバイスを活用して観戦を楽しむ、新しいスポーツ観戦のスタイルを提案しています。ファンと常につながっているスマートなスタジアムとして、個人のスマホでリアルタイムに映像が楽しめるソリューションです。見逃したシーンをもう一度見たり、違う角度から見てみる。あるいは、自分が好きな選手を拡大して見るなどといった楽しみ方ができます。

今年3月に開催された、日本代表とブラジル代表が闘うブラインドサッカー国際親善試合では、ブラインドサッカー協会より「音声での情報伝達を使わない新たな観戦方法や盛り上げ策による、魅せる大会づくり」について相談を受け、このシステムの実証実験を行いました。利用者は「VOGO Sport」のアプリをダウンロードし会場内で起動するだけで、WiFiによる配信でゲームの動画を楽しむことができます。

会場では、後方からでも壁際でのプレイの様子を見ることができ、利用者およびブラインドサッカー協会からも大変好評をいただきました。また、肉眼では見えないけれどスマホの画面に眼を近づけたら見える方がいらっしゃたことから、視覚障がい者でもゲームを楽しめることがわかりました。その他のメリットとして、イベント会場では当日設置や撤収ができないとシステムの設営が難しいのですが、このシステムはWiFiのアクセスポイントを置くだけという、簡単かつ低コストでの設営が可能です。

今後もパナソニックは障がい者スポーツに関わらず、スポーツ全般の支援に力を入れていこうと思っています。テクノロジーとスポーツが連動する、楽しい暮らしを創造していきます。

2.視覚障がい者向け美術鑑賞

飯田倫子(いいだ ともこ)氏
パナソニック株式会社 東京オリンピック・パラリンピック推進本部
事業開発部 事業推進課 主務

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もともと美術は眼で見て楽しむものと思っていたのですが、じつは視覚障がい者も美術を楽しんでいるということに興味を持ち、「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」という団体のワークショップに参加しました。そこでは、晴眼者と障がい者が一緒になってディスカッションをしながら作品を楽しんでいて、自分がどう作品を見ているのかを言語化することであらためて振り返ったり、他の人がどのように作品を見ているのかを知ることができるなど、晴眼者でも楽しめました。

ただ、そういった楽しみ方ができるのは、ワークショップという場所や時間に限られます。そこで、この環境を、もう少し広げることができないかと思いました。実際、映画館では視覚障がい者と晴眼者が一緒に映画を楽しめるバリアフリー上映が広がっています。一方で美術館については、まだ学芸員が個別で対応している状況なので、それをITの力で広げたいと考えました。

パナソニックでは今年2月に、本社4階のミュージアムで開催された「マティスとルオー展」において、美術館での鑑賞ガイドの実証実験を行いました。代表的な8作品に音声ガイドを付け、位置情報システムによってガイド可能エリアに利用者が入るとスマホが震えるなど反応し、画面にタッチすると音声ガイドが聞こえるというシステムです。

コンテンツ作りに関しては、ワークショップのメンバーに加えて、一般鑑賞者向けに美術館で音声ガイドを作っているスタッフにも手伝ってもらいました。コンテンツに盛り込む要素としては、まず作品の大きさや色、形など見えているものを表現することが必要です。加えて、見えてないもの、たとえば雰囲気とか印象なども一緒に伝えないと鑑賞にならないと思いました。ただ、そういうものを全部入れるとガイド自体が長くなってしまい、聞いていると疲れてしまうことがわかりました。集中力が途切れて飽きることがないよう、適度な長さに抑えるなど試行錯誤しながらコンテンツを作っていきました。

実験では、障がい者と晴眼者あわせて30名に参加してもらいました。体験後の座談会では障がい者の7割の方が満足したと答え、「美術鑑賞を楽しめた」「想像が膨らんだ」「今後外出するきっかけになると思う」などと答えた方も7割くらいいらっしゃいました。

一方晴眼者の反応としては、通常は美術館に行かないような方でも、「美術ってこうやって楽しむんだ」「こういうふうにも見れるんだ」といった、新しい発見について感想を述べられました。通常、音声ガイドは美術館に通い慣れている方や絵をよく知っている方が使っているのですが、初心者の方でも楽しめるものだと感じました。

こういったシステムをすぐに美術館で導入するには、まだまだいろいろと課題があります。たとえば、障がいが持った方が美術館に来るには、介助者が必要になります。したがって、一人でも美術館に来られるような仕組みも必要になります。また、晴眼者も楽しめるということも大切です。視覚障がい者だけを対象にしたシステムでは、対象が狭くなってしまうので普及しません。同じように、美術館や博物館だけを対象にすると狭くなってしまうので、そこを広げていくことも今後検討すべき課題と捉えています。


■講演2 最新のレーザー技術で弱視者を補助、網膜投影する「網膜走査型レーザアイウェア」の紹介


菅原 充(すがわら みつる)氏
株式会社QDレーザ 代表取締役社長

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現在、医療機器メーカーと協力し、視機能を向上させるアイウェアの開発を行っています。デジタル情報をRGBのレーザー光にして網膜に書き込むアイウェアによって、視覚障がい者の視力を回復させる支援の実現を目指しています。

レーザー光を使ったアイウェアは、水晶体の屈折異常など前眼部に問題があっても、網膜にレーザー光が届きさえすれば視力を回復させることができます。脳に直接情報が送り込まれるので、眼が疲れると感じることもなく長い時間見続けることができます。また、網膜自体に問題があっても、一部でも網膜が生き残っているところを狙ってレーザー光を当てれば、視力が回復できる可能性があります。

フレームの内側にプロジェクタが付いていて、そこからフレーム前面に装着したカメラからの撮像や外部入力された映像を網膜に投影します。前眼部の屈折力に依存しない鮮明画像が得られる、フリーフォーカス(焦点の調節がいらない)を実現します。

現在の装置では、視力は0.5までしか出せませんが、1年後に0.8まで出せることを目指しています。2014年当時は背中に背負うほどの大きさのコントロールボックスが必要でしたが、現在のコントロールボックスはポケットに入ります。1年後にはパームサイズにすることを目標としています。将来的には、光学機器と制御回路を全部アイウェアの中に入れて、普通の眼鏡のような形にすることを考えています。また、レーザー光を網膜に当て続けることに関して、安全性について質問されることも多いのですが、レーザーの安全に関する国際/国内規格(IEC60825-1/JIS C 6802)もしくは米国FDA(食品医薬品局)の基準 (21CFR1040.10)において、目に入れても害がない強さと定義(クラス1)されています。

日本以外にも、北米と欧州でも医療機器認証の取得を目指しており、まずは日本と欧州で、前眼部疾患を対象とした治験を始める予定です。

現在、品質マネジメントシステムを含め、医療機器としての各種規制および基準に対応したプロトタイプが完成した段階です。たとえば、日本ではパラリンピックを目指している柔道選手に使ってもらっています。柔道で打撲して網膜剥離になった左眼は手術の失敗によって失明し、右眼の視力は0.02で、スマホを眼に近づけるとかろうじて見える状態でした。それをアイウェアによって、視力を回復させることができました。また、欧州では、化学実験の失敗で角膜が焼けてしまった治験者が、角膜のスイートスポットからレーザー光を通すことで0.25まで視力を戻すことができました。これは数世代前の機器なので、今なら0.5まで出せると思います。

現在のスケジュールで進めば、年内に医療機器としての各種規格への適合試験にパスし、治験を開始し、並行して量産ラインを立ち上げる予定です。2018年度中には日米欧で医療器認証をとることができる見込みです。 一方、眼科診療では、視力や眼圧は測ることができますが、網膜のどの場所にどのくらい視力が残っているかを測る手段はありません。その課題を、新しいテクノロジーで解決したいと思っています。例えば、網膜のどの部分にどのような病変があって、どのくらい視力が残っているのかがわかる検査装置を開発しています。これによって、眼疾患の早期発見も可能になります。

これらについては、来月から医療機関と臨床研究を行う予定で、2020年度に眼科検診用や検査用として実装されることを目指しています。網膜をスキャンする装置が検診センターや図書館などに置かれて自由に使えるようになり、家庭でも購入できるようになると、病院に行く前に眼の病気の始まりを発見することができます。


■トピック LINE BOT AWARDS 優勝チーム「&HAND」から、目や耳の不自由な方をビーコンとチャットBOTを活用した支援について

AND HAND
池之上智子(いけのうえ ともこ)

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AND HANDのビジョンは「やさしさがわかる社会を作りたい」です。そのために私たちは、誰もが手助けし合える道具を提供します。本日紹介するのは、「LINE BOT AWARDS」でグランプリを受賞した「LINE Beacon」というプロダクトです。LINE Beaconは、グーグルのアイデアソン「Android Experiments OBJECT」でグランプリを受賞した「スマート・マタニティマーク」のアイデアが元になっています。

まずは、スマート・マタニティマークについてご紹介します。電車の中ではスマホを見ている人が多く、目の前に妊婦さんが立っても気がつきません。そこで、スマホを使って、妊婦さんと席を譲ってあげたい人とをつなげる仕組みを提供します。妊婦さんは、わかりやすいところにスマート・マタニティマークのデバイスを付けておきます。そして、妊婦さんがいたら席を譲ってあげたい意志がある人は、事前にサポーターアプリをスマホにインストールしておきます。電車の中で妊婦さんがデバイスの電源を入れると、近くにアプリをインストールしたスマホがあれば通知されます。サポーターが「譲りますボタン」を押せば、妊婦さんのスマート・マタニティーマークが光って、サポーターの存在を知らせるという仕組みです。

次にLINE Beaconですが、今の日本において、電車やバスの優先席に表示されているマークの意味を正しく理解している人はどのくらいいるでしょうか。それらが理解できても、実際に手助けをする側になった時に、正しい行動がとれるでしょうか。LINE Beaconは、身体や精神的に負担や困難をかかえている人と、手助けをしたい人を繋ぎ、チャットボットで具体的な行動をサポートします。

LINE Beaconでは、LINEをプラットフォームとしてコミュニケーションをサポートします。耳の不自由な人用と目の不自由な人用のビーコンがあり、手助けを必要としたい時にビーコンをオンにすると、自分の周囲にいるサポーターにLINEのメッセージが届きます。メッセージが届いたサポーターはチャットボットを通じて手助けを必要としている人の状況を知ることができ、具体的な行動をおこすことができます。

聴覚に障がいを持つ人は一目見てもわからないため、街中を歩いていて誤解を受けることがあります。また、電車に乗っている時に事故や遅延があっても、その案内は音声による情報が多いため状況が伝わりません。自分で何が起きているのかを知らべるためSNSなどを使いますが、必ずしも欲しい情報にアクセスできるとは限りません。駅員に尋ねたくても、筆談は手間がかかるので遠慮することが多くなります。そんな時、ビーコンをオンにしてLINEで質問したい内容を選びます。近くにサポーターがいたらLINEに通知が届くので、つながりを同意して質問に対する回答に応えてくれます。

聴覚障がい者からは、「今何が起きているのかを気軽に質問でき、情報がすぐわかるので気持ちが楽になる」という感想をいただきました。また、視覚障がい者の場合、普段慣れた道を歩いていても、人や物にぶつかって方向感覚がなくなってしまうことがあります。そこで、ビーコンを白杖に取り付けて常にオンにしておけば自分の存在を周りのサポーターに知らせることができ、危険な場所に近づいた時に声をかけてもらうことができます。

AND HANDのメンバーは、全員がそれぞれ別の会社に属しています。さまざまな職を持つメンバーが集まったプロジェクトなので、得意分野もあれば不得意分野も多く、LINE Beaconの実用化にはみなさんのご協力やご支援を必要としています。


■ワークショップ


滝澤友香里(たきざわ ゆかり)氏
パナソニック株式会社 東京オリンピック・パラリンピック推進本部
パラリンピック統括部 主務

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視覚に障がいを持つ方は、買い物も大変です。そこで、視覚障がい者がスマホのカメラを向け、「これなあに」と聞けば、「その牛乳の賞味期限は○○までですよ」とか「今ならそのお肉が30%引きで買えますよ」などの情報を伝えてくれる、お買い物サポーターといった仕組みを考えています。視覚障がい者はなかなか一人では買い物にも行けませんが、一歩踏み出すところまでは協力できるのかな思っています。買い物に限らず、たとえば動物園とか水族館に行った時には、「今目の前にすごく大きなサメが来てますよ」と伝えることもできると思っています。

将来的には、賞味期限はいつかなど単純な回答に関してはAIが行い、それ以外は人がカバーすることで、いろんなパターンの取り組みが考えられると思いれます。そこで、今回のワークショップでは、視覚をサポートする機能があったらどんなことを楽しみたいのかということを、グループ内で語り合ってもらいたいと思います。

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●グループ①
釣りの名人とかナンパの名人とか、いろんな名人の視覚を利用したいです。釣りの名人ならば「浮きがこういう状態になったら吊り上げなさい」とか、ナンパなら「この子は落としやすいよ」とか、農業なら「この苗はいい状態だから選定して育てなさい」など、あらゆる名人の視覚やノウハウをサポートしてもらえたら便利でしょう。

●グループ②
今、視覚障がい者が利用する肩乗りロボットを作っています。サポーターが遠隔からロボットの眼になって、その場の状況を教えます。弱視の方は、相手がマシンの時に特に困ると聞きます。たとえば、エレベータに乗った時に行きたい階のボタンが見えづらかったり、自販機ではコーヒーが欲しいのにボタンがわかりにくい。そういった日常生活のいろんなシーンで、こういうロボットが役に立つでしょう。

●グループ③
視覚障がい者がファッションチェックを行う際に、上に柄ものを着た場合は下はシックにした方がいいとか、今の季節はこういう色のリップがお奨めなど、色についてサポートしてあげようという話が出ました。他にも、ファーストフードの店ではカウンターの後にメニューがあったり、券売機では料理の写真の上に文字が乗っていることで見えづらいことがわかりました。各店舗の券売機の写真を掲載し、事前にどの料理がどのボタンなのかが覚えられるグルメサイトもあるそうです。

●グループ④
視覚障がい者が普段困っていることとして、飲食店でのメニューの話が出ました。食べたいものを選ぶときに一つ一つ料理の名前を読んでもらうわけにもいかず、普段は焼鳥屋とかに入ってもなんとなくメニューを決めているそうです。視覚に障がいがあっても、自分で食べたいものを選んで食事を楽しんでもらうには、どのように視覚をサポートすればいいのかを話しました。

●グループ⑤
健常者の方に食事に誘ってもらうと、美味しい店やヘルシーな料理を出してくれる店にばかり行くことになります。でも、実際には視覚障がい者の方でも、もう少し脂の濃いものも食べたいという気持ちを持っているそうです。また、展示会や博物館に行った際、一般の人と一緒に入館すると混んでいる時は気兼ねをしてなかなか楽しめません。そういう障がい者のための、特別な日を設けてもらうにはどうすればいいのかといったことを話しました。

●グループ⑥
視覚障がい者でも楽器が弾けるようになれば、人生が豊かになるという話をしました。たとえば、鍵盤が振動する、視覚障がい者向けのピアノ練習用キーボードが作れないかと。指導者が「振動している鍵盤を触ってください」と言ってドミソと順番に鍵盤に触ってもらい、「今の音がドミソで、それがCというコードになります」などと教えることで、視覚障がい者でも楽器が弾けるようになるのではないかと思いました。

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