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【報告レポート】第7回:人を支えるテクノロジーの未来共創プログラム "空間での情報提供の最新テクノロジーの現状と未来を考える(聴こえない音、音波×ビーコン、ロボット)"

2017年4月 9日|新着情報

2017年3月29日ナレッジソサエティ・イベントルームにて開催した「空間での情報提供の最新テクノロジーの現状と未来を考える」は、お陰さまで多方面の方々からご参加をいただき、盛況にて終了しました。
ゲストスピーカーの方々からは、貴重な具体事例が発表され、さらに後半のワークショップでは、視覚障害者当事者も参加して、現状の生活での工夫や情報取得などの具体的な、私たちが普段気づかないことを共有し合いながら、とても有意義な情報交流が出来ました。当日の内容についてご報告します。


■前半

<講演1>
瀧川 淳(たきがわ あつし)氏
エヴィクサー株式会社 代表取締役社長

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テーマ:最新の音透かし技術活用事例と今後について

音透かしとは、スピーカーから流す音に文字や情報などの信号を埋め込む技術です。その信号をスマートフォンやスマートグラス、ロボットなどのマイクで受信し、画面に文字を表示させたり音を出したりなど、なんらかの動作を行わせることができます。エヴィクサーでは、その要素技術を基に自社で開発した「Another Track」というシステムを提供しています。コンテンツの音声から再生箇所を認識したり人間の耳に聞こえない高周波数帯の音を使うこともあり、その場の演目やコンテンツに合わせて最適なソリューションを提供しています。小さな劇場でもパソコンとスピーカーをケーブルで接続して信号を送り出すことができるので、コストをかけずに従来の設備が利用できます。
同じようなことを実現するために、Wi-FiやBluetoothなどさまざまな通信技術があるのですが、音には音の特徴があります。それをフルに生かせば、会議室やスタジアム、劇場などさまざまな場所で通信が実現できます。小さな会場でも、講演用に使っているスピーカーなど既存の音響設備でスマートフォンが制御できるのです。

これまでの事例としては、劇場映画『貞子3D2』の上映中に、演出のタイミングに合わせてスマートフォンの画面に画像を表示させたり音を出したりするようなアプリを提供しました。また、日本橋の明治座で3月31日まで公演された『SAKURA』という、インバウンド(外国人観光客)を対象とした演劇では、公演中にシーンの解説や歌詞を英語や中国語、韓国語などの言語でスマートフォンに表示させました。
通常、映画館や劇場では、スマートフォンを機内モードにして電波の送受信ができない状態にするよう案内されますが、その状態でもマイクは使えるので信号を受信できます。
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実際に送っている情報量はとても軽いデータで、主に動作や演出のトリガーだけを転送するだけです。映画の字幕などに使用する場合は映像との遅延があると使えないので、表示させるコンテンツは先にダウンロードさせ、あくまでも表示させるタイミングを同期する信号を送っているのです。
大規模なイベント会場での活用例としては、みんなで鑑賞するマルチディスプレイの画像とスマートフォンを同期させ、映像はマルチディスプレイを見ながら音楽はスマートフォンから流れる高音質のものを楽しむといったことができます。

バリアフリーの例として、先日横浜音楽堂で行われた「バリアフリー能」でも音透かしを活用しました。いろんなツールを使って情報補償を行い、目や耳に障害を持つ方に能や狂言を楽しんでもらうというイベントですが、昨年からはメガネ型のウェアラブルデバイスを使い、聴覚障害者向けにセリフを字幕で表示しました。最近は映画でも、こういったバリアフリー上映への取り組みが積極的に行われています。映画館では、上映中にスマートフォンを使って聴覚障害者が字幕を見ながら同じスクリーンで楽しむことを推奨するポスターが貼られています。そういったサービスを行っていることを示すマークも作られ、それが貼られている映画ではバリアフリー上映の支援が受けられるようになっています。


講演2

川瀬 勉(かわせ つとむ)氏
株式会社リコー ビジネスソリューションズ事業本部 トランスフォーメーション2.0センター センシングソリューションプロジェクトチーム サブリーダー

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テーマ:音波ビーコン技術の活用事例と今後について

センシングソリューションプロジェクトチームとは、イベントや公共施設、交通機関などでさまざまなセンサーを使って人やモノの位置情報をセンシングし、そこから得られるデータをビジネスに活用する部署です。

たとえば、病院の事例では、医師や患者、院内のさまざまな機器などにRFIDのタグを付け、院内にはアンテナを張り巡らせます。すると、人やモノが動くと5mくらいの範囲でその位置情報が取得でき、病院の中で患者がどこにいるのか、機器がどこにあるのかをリアルタイムに確認できるのです。それらを分析すれば、スタッフが効率的に動くにはどうすればいいのか分析したり、職員の業務補助や危険察知、予知などを行い、最終的には業務改善につなげることができます。

イベントでの活用事例としては、日本ハムファイターズのファンフェスティバルにおいて、スクラッチゲームを企画しました。来場者のスマートフォンにアプリを入れてもらい、スピーカーから信号を送ってどのスクラッチがあたるかという情報を流しました。これは、できるだけ多くのファンに専用アプリをインストールしてもらうことが目的でした。

2015年には国土交通省と共同で、東京駅のガイダンスを音波や無線を使って行う実証実験を行いました。アプリをインストールしたスマートフォンを持ちながら歩くと、電波や地磁気、加速度センサーを使ってどのくらい歩いているかを計算し、ポイントごとに音波ビーコンで位置を補正しました。

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なぜ音を使うのかというと、電波は周波数に限界があり、免許が必要です。また、指向性を持った発信を行うには制御が複雑になります。さらに、Wi-Fiの場合は人が多いと繋がらないことも多く不安定です。
音の長所は、まず遮蔽ができることです。電波はガラスを通過して部屋の外まで漏れますが、音を使えば確実に部屋にいることが確認できます。これによって、例えば、お店の中にいる人だけにクーポンを配信することができます。Bluetoothと組み合わせて、近くに来たことを検知しながら、部屋の中に入ると音波で確実に中にいることが分かる仕組みも作れます。
他にも、スマートフォンなどには標準でマイクが付いているので、多くの人が新たにデバイスを買わなくても使えます。また、人間が聞き取りにくい高い周波数帯を使っているのでノイズレベルの影響を受けにくく、電車の駅などでスピーカーから音を流しても問題ありません。
一方で、音は周波数が高くなるほど通常のスピーカーではまっすぐにしか進みません。そこで私たちは、ほとんど180度に範囲に高周波の音を届けることができるスピーカーを作りました。

また、異なる2つの音を左右から出すと真ん中に音の壁を作ることができます。このような特性を利用して音で境界を作ると、視覚障害者の方が駅のホームの端に近づいていることをスマートフォンで知らせることもできるようなります。


講演3
武者 圭(むしゃ けい)氏
サウンドスケープデザイナー(フリーランス) 
ハーモニー・アイ会員・福祉のまちづくり学会委員

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テーマ:視覚障害者の空間認知および情報収集の現状と未来

視覚障害者、特に全盲者は視覚の代替手段として触覚(皮膚感覚、体性感覚)、
聴覚(音源定位、エコーロケーション、障害物知覚)、味覚、嗅覚を使います
(※登壇者より:当日の資料で「嗅覚」が落ちておりました)。空間認知は自ら
の体験を軸に、盲学校や訓練施設で教えられたことや友人などを通じて知ったこ
とが加わり、経験則として形作られます。情報集めの手段としてはインターネッ
トが欠かせないものとなり、それに呼応してガラケー(らくらくホン)から特に
iPhoneやiPadに移行する人が増えてきました。

一方で、視覚障害者誘導システムの原点ともいえる点字付き触知案内板は、ガム
テープで補強されていたり音声案内装置が故障していたりして、事実上は仕えな
い例が散見されます。それでも苦情がないことを考えると、残念ながら触知案内
板は活用されていないと言わざるを得ないのかもしれません。触知図に代わるイ
ンターネットを活用した例として、歩行経路を言葉で細かく箇条書きにしたサイ
トを作り、それをガラケーやスマホでなぞりながら歩く方法が利用されています。

個人が手許で主体的に情報を得られるように、センサー技術を使った機器も開発
されています。「パームソナー」は超音波のビームを前方に照射し、障害物から
反射した音波を振動に変えて知らせてくれます。この方式を白杖に埋め込んだ
「電子白杖」も、外出をより安全にする補助機器として商品化されています。た
だ、こうした機器は基本的な個人の歩行能力によっては使いこなせない懸念があ
り、高価になってしまうというデメリットもあります。

「シグナルエイド」は微弱なFM電波を使い、目的地に設置した機器と個人の持つ
端末間でやり取りを行います。予め設置された範囲に入ると端末が「ピッピッ
ピッ」とビープ音を鳴らし、その場所で音声案内が受けられることを知らせます。
また、「トーキングサイン」は赤外線を利用して、個人が目的地を探索できるよ
うにするシステムです。赤外線は発信源に対する距離と角度によって受信感度が
上がる特性があるので、ピンポイントの誘導に適しています。

国交省が東京大学と視覚傷害当事者の提案を受けて「自律移動支援プロジェクト」
を立ち上げたのですが、今そのサイトを覧ると「(旧)」と表記されていて、プ
ロジェクト自体がすでに終了したことがわかります。点字ブロックを中心に起点
となる地面に埋め込んだメンテナンスフリーとされたRFIDタグと白杖先端のセン
サーを連動させ、そこから得られた位置に割り当てた音声案内を個人の持つ端末
を通じて当時は万能技術とされた骨伝導ヘッドフォンで聴く大規模なシステムで
した。実際に銀座で行われた実証実験に参加したのですが、私は骨伝導がほとん
ど効かない体質であり、同じポイントを通過する度に全く同じ詳細情報が繰り返
し流れてくることがありました。実際は日本全国にこのシステムをくまなく敷設
することを目的としていたようなのですが、機器のメンテナンスや情報の更新を
どうするかが課題となったようです。改善と普及には期待していたので、プロジ
ェクト自体が終わったことは残念です。

これに代わるシステムと言えるかもしれませんが、清水建設とIBM、三井不動産
が協力して室内と室外をシームレスに誘導する試みがります。ビーコンやGPS、
加速度センサーなど複数のセンサーを組み合わせて、特殊な機器を使わずにス
マートフォンのアプリで誘導する方式です。日本橋のコレド室町を舞台に、2017
年2月は視覚障害と車いす使用者向けに、3月は一般用に実証実験が行われまし
た。

ここまで視覚障害者が目的地に安全に辿り着くためのシステムや機器を紹介して
きましたが、全盲当事者はどのような希望を抱いているでしょうか。その1例と
して、iPhoneだけを頼りに1人旅をした視覚障害者のレポートを紹介します。本
来、全盲の障害者が1人で知らない土地に出かけるのは非常に危険です。今まで
は外出する目的と場所をあらかじめ決め、ボランティアやガイドヘルパー派遣業
者に頼んで時間帯を決めて介助をお願いしていました。この方は、尾道市内で開
かれる音楽イベントを楽しむことを目的として、そこでどのように移動するかや
時間帯を決めずに出かけています。地元に着いてからiPhoneのアプリを手がかり
に移動し、イベント事務局にスマホの電話機能で確認し、人に話しかけてその場
で情報を集めながら1人で歩き回りました。

「バリアフリー」は最初に目的があり、「その壁を打破する手段を提供するノウ
ハウ集」です。あくまでも目的重視のバリアフリーに対して、「ユニバーサルデ
ザイン」は「できる限り多くの人が同じことをできるようにする」ことを目指し
ているので、選択肢を与える中で生活を楽しむことができます。誘導も特殊なも
のを使うのではなく、すでにあるものを組み合わせて活用し、どうしても足りな
いときは道具やツールを開発して組み合わせます。そうすればコストパフォーマ
ンスもよくなり、一般的で汎用性のあるものができるはずです。


参加者との質疑応答

質問:
尾道に1人でイベントに出かけた人は、どういうアプリを使っていたのでしょうか?

武者:
「BlindSquare(ブラインドスクエア)」という有料アプリで誘導してもらい、あとはグーグルマップとSIRIを使っています。BlindSquareは、位置情報を集めたビックデータを視覚障害者が使いやすいようにカスタマイズして案内してくれます。

質問:
視覚障害者はどのようにiPhoneを使っているのですか?
武者:
iPhoneには画面の表示を全部音声で読み上げてくれる、ボイスオーバーという機能があります。androidにも同じような機能があるのですが、iPhoneの場合BIOSレベルで対応しているので安定感があります。最初は、スマートフォンは画面がつるつるして視覚障害者には使えないと言われていたのですが、今では利用者が増えてきました。


■後半

ミニワークショップ
(司会:ビジネスイノベーションハブ株式会社 白井和康氏)
※各グループに視覚障害者1名が入り、発表された技術を活用なども含め、視覚障害者の空間移動の際の情報取得の現状と未来を考えてみました。

〇グループ①の発表
視覚障害者の方から、iPadを持って1人で海外旅行に出かけたが旅行先で無くしてしまい、現地で新規契約で購入して危機を乗り越えたという話を聞きました。全世界で普及しているデバイスなので、どこに行ってもiPadさえあれば迷っても大丈夫という安心感を持つことができ、いろんな国に行くことが楽しみになったという話に興味を惹かれました。

〇グループ②の発表
視覚障害をもちながら、もともと水泳をやっていたので今はサーフィンを楽しむようになったということに驚きました。世界一周も1人で行かれたそうです。インターネットの普及によっていろんなことが変わったのかと尋ねたら、生まれた時からインターネットがあったと聞いて世代の違いを感じました。最新のデバイスを使えばさまざまな情報を得ることはできますが、GPSを使っても最終的なところまでたどり着けないことが多いので、そこにまだ人が介在することが必要だと思いました。

〇グループ③の発表
自分は2年間アメリカに住んでいたのですが、車いすで生活している人がいつも楽そうにしていることが印象に残っていました。歩道が広く、街にはスロープがたくさんありました。日本では車いすを使うと、山手線で移動するにも通常の1.5倍時間がかかってしまうそうです。アメリカでは、車いすはもともと迷惑をかけるものだという前提で、特に当事者が遠慮をするようなこともありません。対して日本では、迷惑を掛かけてすみませんということを当事者が醸し出しています。アメリカは逆にお前たちどけよというくらいのカルチャーで、そこの、間点がとれればいいなと思いました。

〇グループ④の発表
視覚障害者の方に何をしたいかと聞いたら、居酒屋にふらっと入りたいと言われました。ふらっと入るためには、匂いが重要です。おいしそうな焼き鳥の匂いが気になったら、ビーコンによって位置情報が特定され、スマートフォンでその店のメニューなどを教えてくれるといいなという話になりました。それ以外にも、水泳やスキーなどいろんなことに挑戦していて、Kソナーという超音波を出す道具を使って1人で出かけているという話を伺い、アクティブな活動に感心しました。

〇グループ⑤の発表
発表者の武者さんはITを使いこなしていますが、実際には使える障害者と使えない障害者のレベルの差は大きいとのことでした。ITの可能性を調べるためにいろいろなものを使っているうちに、ITばかりに依存できないと感じているそうです。やはり人の介在や理解を求めていくことは必要です。ITやIoTの可能性を探っていくことも大切ですが、障害者当事者の思いをもっと周りの人が汲み取ってほしいそうです。

〇グループ⑥の発表
視覚障害を持っていても、ITの発達によって大まかな目的地までは行けるようになりました。でも、最後の微調整はやはり難しいようです。また、食べ物屋に行く場合でも、カレーは匂いがあるので入っていきやすいのですが、ラーメンはわかりにくいそうです。ただ、自分も方向音痴なので、あまり変わらないなとも感じました。日本人は障害を持っている人に出会っても、なかなか声をかけることができません。なにに困っているのかわからないので、それがきちんと伝えられるサイン、きちんと受け取れるサインがあれば、もっと簡単にバリアフリーが実現できると感じました。

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