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【報告レポート】第6回「人を支えるテクノロジーの未来共創プログラム」

2017年1月 5日|新着情報

2016年12月14日ヤフー新社屋をお借りし開催した「IoTを活用したヘルスデータの取得と活用についての未来を考える」は、お陰さまで多方面の方々からご参加をいただき、盛況にて終了しました。

ゲストスピーカーの方々からは貴重な具体事例が発表され、とても有意義なセミナーとなりました。当日の内容についてご報告します。


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《前半》ミニスピーチ

1.タイトル「ConnectEveryhing?myThingが目指す繋がる未来」

中村浩樹氏
(ヤフー株式会社スマートデバイス推進本部オープンイノベーション室) 

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IoTによって、私たちの日常生活はどのように変わって来るでしょうか?

たとえば、天気予報が雨に変わると玄関の傘立てが赤く光るようになり、お出かけの際に傘が必要になることを教えてくれます。これまでのように、私たちがスマートフォンを使って自分で情報を取りに行くのではなく、情報の方から私たちの方に来てくれるのです。また、最近話題のAmazon DASHのように、パソコンやスマートフォンが使えない高齢者の方でも、ただボタンを押すだけでインターネットが利用できるようになります。このようにIoTは、私たちの日常生活の中でインターネットの利用の仕方を変えてしまいます。 最近では"No UI"と呼ばれているのですが、IoTによって、情報をやりとりするユーザーインターフェースがディスプレイではなくなります。すなわち、傘立てやボタンなどが情報の出口や入口となるのです。それらのモノをつなげるために、私たちは「myThings」というプラットフォームを提供しています。

myThingsの役割はとてもシンプルです。「○○だったら○○する」ということを実現するだけです。センサーなどからの情報をトリガーにして、なにかを動かします。逆に、なにかを動かすことによって、情報を発信します。先の例でいえば、スマートフォンと傘立てをmyThingsでつなげておき、雨が降りそうだという情報をトリガーにして傘立てを光らせるようにしておくのです。他にも、さまざまな情報とデバイスを組み合わせることができます。たとえば、防災情報と、赤外線で家電を制御するデバイスを組み合わせれば、大きな地震が起きた時に自動的にテレビのスイッチをオンにして、チャンネルをNHKに合わせるようなこともできます。

デバイス同士をつなげることもできます。身に着けるだけで起床や睡眠を検知してくれるデバイスと、コミュニケーションロボットをつなげてみましょう。離れて暮らす高齢の両親にデバイスを付けてもらえば、両親の生活の様子をロボットが言葉にして知らせてくれます。これまでも、こういった情報をスマートフォンに送ることはできました。しかし、特定のスマートフォンに送られたパーソナルな情報を、家族で共有するロボットで受け取るようにすれば、家族間でのコミュニケーションのきっかけにもなります。

このように、IoTによって、私たちは日常生活の中で新たな体験を得ることができるのです。



2.タイトル「医療ITの次の形?情報共有から情報活用へ」

吉野 裕亮氏
(株式会社シェアメディカル 取締役兼COO)

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シェアメディカルは、"医療の現場をよりよいものにしていこう"というキーワードのもとに立ち上げた会社です。医療プラットフォーム「メディライン」をはじめ、医療系ICTシステムの開発、セミナー・イベント運営などの事業を進めています。

メディラインは、医療事業者用のLINEまたはサイボウズのようなコミュニケーションツールです。こういったシステムを医療用として活用する場合、押さえておくべきポイントがいくつかあります。たとえば、どこの病院もコンプライアンスの面から、院内のシステムは外部のネットワークにはつなぎたくありません。そこで、クラウドではなく、院内に専用のサーバを置くようなシステムとしています。

また、医療の現場にはITの専門家がほとんどいないので、システムの構築・運用という面では一般企業よりも遅れています。このようなことから、メディラインは箱を開けてコンセントにつなげれば誰でもすぐに使えるにようにしました。運用後は院内ですべての管理を行うことができるので、端末紛失の際にもすぐに管理者がアカウントを停止することができます。

医療の現場では、法律上記載が義務付けられているカルテや介護記録、看護記録などさまざまな書類が大量に保管されています。そして、そういった書類の作成・管理を支援するために、さまざまなITツールが導入されています。しかしながら、それらのITツールは、いろいろと利用が制限されていることが多くて使い勝手が悪く、さらに研修が必要など、必ずしも負担軽減につながっていません。結果的に医療ITの浸透が進めば進むほど、現場は疲弊しているのです。

一方で、医療の現場ではカルテからの情報だけでなく、多角的に患者を捉えることが重要になってきました。そのため、最近になって取り入れられようとしているのが、「ナラティブ(物語)情報管理」です。ナラティブ情報とは、カルテによる病状の記録や、体温・血圧などといったヘルスケア情報の他に、患者の趣味や好みの食べ物などといった性格や生活に関する情報を加えたものです。

このように、診察以外にも種々の文書作成や情報収集など多忙な医師に対して、ICTやIoTを活用したナラティブ情報の収集や活用などの支援を行うことで、医療と患者にとって最適な距離感を構築したいと考えています。


3.タイトル「高齢者の就寝中のバイタルデータを取るIoT製品の紹介」
長岡 浩氏
(パラマウントベッド株式会社 技術開発本部 研究開発部 部長)

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厚労省の方針では、今後は患者に手厚い看護ができるという急性期の病院を減らして、療養型の病院を増やしていこうとしています。急性期の病院の維持運営はお金がかかるため、医療費削減の観点からの判断です。一方で、今、日本では患者の高齢化が問題になっています。そんな状況で急性期の病院が減らされると、新しい患者を受け入れるたびに重症患者が病院を移らなければならず、最後は重症患者を在宅看護しなければなりません。実際、現在でも認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護しているような状況です。

急性期の病院は7対1介護として、患者7人に対して1人の看護師が見ているという体勢です。これが夜間になると、20人を1人で見ることになります。また、最近は入院日数が短縮されているので、次から次に重症の患者が入ってくるという状況となり、現場の看護師は疲弊しています。一方で、日本における人口1000人当たりの医師の数はアメリカと変わらないのですが、日本は患者の数が多いためにスタッフの負担が大きくなっているのです。こういった状況に対して、病院経営者はICTやIoTの力で助けてもらいたいと思っています。日本は、ヘルスケアの分野でも未病予病対策としてICT、IoT活用に力を入れていますが、本当にICT、IoTの力が求められているのは、医療と介護の現場であると思います。

実際に医療の現場では、どのような製品が求められているのでしょうか。一つは、非侵襲で利用できるということ。患者がセンサーなどを体に付けていることに、気が付かない工夫が必要です。そこで、ベッドの上の患者の動作を計測して睡眠状態の評価などを行う「眠りSCAN」という製品は、マットレスの下に敷くだけで利用でき、患者にはその存在に気が付かないようにしています。こういった製品でいろんな患者のデータをとり、医療プラットフォームにつなげていきたいと考えています。

これから高齢者社会に向かう諸外国は、先行している日本の医療・介護技術を学ぼうとしています。日本で売れた製品は海外でも売れます。医療・介護分野におけるICT、IoTビジネスは、今後は国際化を視野に入れることで、ビックビジネスにつながっていくと思っています。


《後半》パネルディスカッション

テーマ:IoT活用によるヘルスデータの取得と活用についての現状と未来を考える

●モデレーター
 吉野裕亮氏

●パネラー:
 石谷伊左奈氏(イサナドットネット株式会社 代表取締役)
 三宅正人氏(工学博士・国立研究開発法人 産業技術総合研究所 イノベーションコーディネータ)
 長岡 浩氏


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吉野:
まずは、ここから加わっていただいた石谷さんと三宅さんから、自己紹介をお願いします。

石谷:
イサナドットネットは、IoTやロボット、チャットのUIなどに関するソフトウェアを作っている会社です。ヘルスケアの分野でいえば、コミュニケーションロボットPepperを医療機器と連携させ、利用者がセルフで血圧や体温測定を行うことでスタッフの負担を軽減させるソリューションや、ウェアブルセンサーからのバイタルデータをクラウドに蓄積して分析するプラットフォームの構築などを行っています。

三宅:
生体データと人間構造データを収集して利用する技術を開発する部署に所属し、それらのデータを企業に利用してもらうためのコーディネートを行っています。ヘルスケアサービスのソリューションを開発している企業や、それを提供する企業はたくさんあるのですが、それらがどこまで効果があるのかについての信用性が確保されていないため、なかなか普及が進みません。
そういった苦労を解消するために、"ヘルスケア・サービス効果計測コンソーシアム"を設立しました。たとえば、臨床試験の専門家に疲労感の計測をお願いしても、そのノウハウがありません。一方で、先端の企業や機関ではすでに疲労感の計測を開発しています。そこで、臨床試験の専門家と計測技術の専門家をつなげるといったことが、コンソーシアムの使命になります。

吉野:
みなさんがヘルスケアデータの取得について、どういう点で苦労されているのか教えてください。

石谷:
私たちは、バイタルデータと会話を収集しています。会話は、ロボットとの対話から得ます。バイタルデータについては、例えばウェアラブルセンサーなどは心臓の近くに貼るのですが、それは患者さんから嫌がられます。やはり、見えているところにセンサーを付けるのはなかなか難しいですね。会話については、ロボットやコンピュータでは、まだ人間の耳ほどうまくは声を収集できません。

吉野:
医療の現場では、音声のテキスト化を求められるケースが多いと思います。私も2005年くらいからテキストマイニングとか音声データのテキスト化を行ってきたのですが、今はどのくらいまで精度が上がっていますか?

石谷:
音声データのテキスト化については、マイクで拾った音をテキストに起こし、それを文章として解釈するという2つのステップが必要です。雑音が多いところでは、まずマイクが音を拾うことが難しい。さらに、人間の会話はいい加減なところがあるので、それをコンピュータが文章として解釈できないというのが現状です。

長岡:
医療や介護の現場においては、バイタルデータを収集することについて壁があります。まず、対象者本人からの許可が必要で、高齢者などの場合は家族からの許可も必要になります。さらに、製品開発の段階になると倫理審査委員会を通す必要があります。ですので、いろいろとチャレンジしたいのですが、手続きが面倒というのが現状です。

三宅:
産総研は研究目的でヘルスケアデータを収集するのですが、その際にビックデータはあまり利用価値がないと思っています。私たちは、データの中に潜むなんらかの関係性を解き明かしたいと思っているのですが、ビックデータではそれに役立つデータは集まってきません。したがって、外からデータを収集してくるのではなく、事前にきっちりと仮説を立て、それにふさわしいデータをラボの中でとります。
たとえば、ラボの中に横断歩道や段差などを作り、人間の歩き方や転び方などに関するデータを取得します。そうやって得られたデータは「ディープデータ」と呼ばれ、事前に立てた仮説が通用するかどうかを検証するために、ビックデータを利用することがあります。


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吉野:
ディープデータは、一般の民間企業でも利用できるものですか?

三宅:
私たちのラボのような環境を用意することは、民間企業ではなかなか難しいでしょう。私たちは共同研究を通して、民間企業にもラボを使ってもらえるようにしています。

吉野:
ヘルスケアデータを取得すると、次のステップは分析・活用になると思います。データの分析に関して、最近はAIなどを活用するケースもあると思いますが、どういったことに気を付ければいいでしょうか。

三宅:
ヘルスケアデータの解析については、臨床試験のように無作為化対照試験を行うしかありません。ただし、臨床試験のデータは、病院という完全に制御された空間の中で、看護師や医師によって集められます。ところが、ヘルスケアのデータは制御されない外部の環境の中で集められるのでノイズが多く、バイアスがかかって偏りも生じます。そのため、分析・活用に際にそれらをどうやって取り除くかが大きな課題です。
また、ヘルスケアデータは現場で測定しなければならないのですが、研究室の中で計測するような機器を現場に持ち出すのは難しい。したがって、現場で使える機器、特に非侵襲・非接触でデータが取得できるセンサーなどの開発が必須になり、その際のコストをどうするのかも課題です。


長岡:
今、ヘルスケア向けのウェアラブルセンサーが野放し状態になっています。そこで、医療に役立つエビデンスをきちんととりなさいという方向になっています。したがって、バイタル系のデータに関しては、データの取得自体が難しくなっていくでしょう。ただ、未病や予病などヘルスケアに関しては、食事や排せつ、睡眠などに関するいろいろな情報を取得することができるので、その分析はバイタルとは違ってハードルが低いと思っています。

吉野:
たまに、医療で儲けていいのかということを言われることがあります。とはいえ、企業である以上は収益を上げないといけない。そういったマネタイズや収益化について、なにか苦労していることはありますか。

石谷:
企業としては当たり前ですが、投資に対する効果がないといけない。とはいえ、「あったらいいね」だけではビジネスになりません。たとえば、個人に対して「あったらいいね」を実現するサービスを提供しても、それに対して月500円以上は払いません。したがって、私たちはすでに医療に対してお金を払っている機関に対して、こうすればコストが削減できますよというアプローチを行っています。

長岡:
電子カルテに関わるところに手を出すと、非常にプレッシャーがかかるのでお勧めしません。私たちは、介護における食事、入浴、排せつという3つの分野にフォーカスしています。昨今、高齢者向け施設では、入居者が居心地がよいと感じることに力を入れようとしており、そういう分野ではビジネスが広げやすいです。

会場からの質問:
福祉系の仕事に関わっているのですが、本日のお話はどちらかというと医療系の話に絞られていたと感じています。医療系は対象者が絞られ、症例もパターン化されているので取り組みやすいと思うのですが、介護系はする人もされる人もさまざまなパターンがあります。そういうところに対しては、どういったアプローチができるのでしょうか。

三宅:
それに関しては、産総研でいくつか事例があります。介護する側がどうやってゆとりを作ればいいのかを考え、そのゆとりによって介護される側にもいい効果を与えることができるのでは、という仮説を立てました。実際の介護施設において、介護する人のデータの取得と介護される側の分析を行い、その結果を公表しています。
また、認知症に関してもいろんな経験値が溜まってきているので、認知症の患者にこう接すると穏やかになったといった分析についても、今後進んでいくと思っています。

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